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ヘラクレスの柱は地中海のはずれ、ジブラルタル海峡の南北に立つ岩山です。 スペインの国旗に描かれ、通貨ドルを表すSのたて2本線もこのヘラクレスの柱といわれていますが、古代の宇宙観にとってたいへん重要な役目を果たしています。
歯の世界でも奥歯の重要性は同じで、奥歯が上下に噛み合って顔と顎を支えており、顔面の長さを維持しているのです。 ですから奥歯を失うと、次第に顔の長さが短くなって、口の周囲に深いしわが寄り、老け込んでしまいます。
さらに顔が短くなるにつれ、前歯が飛び出して歯と歯の間に隙間ができ、唇が閉じなくなります。 また、奥歯がなくなると、顎に加わっていた力が、直接、顎の関節に加わります。
顎の関節には口を開閉する筋肉、噛むための筋肉などがついています。 これらの筋肉(咀嚼筋)と協調して頭蓋を脊骨に固定する筋肉群も口の開閉に参加します。
したがって、口の開閉や咀嚼は多数の筋肉の緊張と弛緩が同時的に、かつ調和を保って行なわれる運動です。 これを統合するのは脳にほかなりません。
ですから、奥歯がないとまず顎の関節が大きなダメージをこうむることになり、そのことによって口を開閉する筋肉や、頭を脊骨に固定する筋肉などのバランスが狂います。 そうすると、肩や首が凝る、頭が痛い、姿勢制御が難しくなる、歩行が困難になるといったさまざまな不具合が生じてきます。
ですから、奥歯はどうしてもなくてはならない重要な歯、ということが言えると思います。 歳を重ねるにつれて歯が抜け落ち、これを補うために入れ歯(義歯)をする人が多いのはご存知の通りです。
とりわけ80歳以上の高齢者の大変多くの方が総入れ歯となっています。 歯が抜け落ちた部分に義歯をする。

これはいわば応急処置のようなものです。 応急処置といったのは、義歯やブリッジにしている方々は、だれもが不満を抱えていて根本的な解決になっていないからです。
実際、義歯やブリッジに対する不満、不快の声が、私たちのもとにもたくさん寄せられています。 応急処置ですから、これでよいわけがありません。
1日も早く義歯から、インプラントにすべきであるというのはいくつかの理由があるからです。 まず衛生面からです。
義歯はどのようなものであっても、金属とプラスチックからできています。 プラスチックだけの場合もありますが、金属だけというのはありません。
このプラスチックは吸水性があって、内部に唾液などが浸透していきます。 水分を浸透させることは、いわば入れ歯の中で細菌を培養することと同じになります。

また、入れ歯の掃除がうまくできていないと、歯にバイオフィルムが発生します。 バイオフィルムとは、細菌が重なってできたフィルム状のもので、台所のシンク(流し)などのぬるぬるしたものと同じです。
入れ歯の表面についたバイオフィルムが、咽頭部に落下することもあります。 このバイオフィルムを吸い込んでしまうと、肺炎の原因にもなります。
入れ歯による弊害はこれだけではありません。 味覚にも大きな影響を及ぼします。
たとえば、入れ歯というものは、顎に吸盤のように貼りつかなくては機能を果たせません。 入れ歯と顎の間に隙間があると、入れ歯が動いてうまく噛めません。
そこで上の歯に入れ歯を入れたとすると、上顎にぺたんと張り付くような感じになります。 ところが、顎の内側、口蓋といわれる部分には味蕾があります。
味蕾は食べ物の味を感じ取る器官ですから、入れ歯によってこの部分がふさがれてしまうと味を感じ取ることができなくなってしまうのです。 これは、入れ歯がもたらす「味覚障害」です。
味を感じないと、人は食べる楽しみを失ってしまいます。 入れ歯ひとつで人生の楽しみが失われるわけですから、応急処置であきらめてしまうことがあってはならないのです。
私たちは起きるとまず顔を洗い、自分の顔を見ます。 入念に化粧したり、おでこの小さな吹き出物を気にしたりします。

このように毎日見ている顔ですから、前歯がない、前歯に隙間がある、入れ歯である、歯並びがよくない、歯の色がよくない、などの歯の不具合は、毎日顔を鏡に映して見ている自分が、だれよりも十分に承知しています。 自分の歯は決して美しくないという自覚によって、実は一番傷ついているのは自分自身なのです。
それは、歯の不具合が強いコンプレックスになっているからです。 このコンプレックスがあると、自分の笑顔が気に入らず、人前で思い切り笑うことができません。
さらにコンプレックスを抱くことは、人としての尊厳に関わる問題をはらんでいます。 これをいつまでも解消しないままでいると、プライドや自信さえ失ってしまいかねないのです。
プライドや自信の喪失は、自分はたいしたことのない人間だ、と人格や存在そのものを否定する傾向に進みかねません。 さらにエスカレートして、生きる価値がないという方向に進む危険さえあります。
このように毎日、自分の顔を見ることで傷ついていると、自分を否定することに結びついていくのです。 私たちは幸福な人生を歩むために、自分にプライドを持ち、自信を持って生きていかなくてはならないのですが、そのためにもきれいな歯は非常に大切なものなのです。
顔は、私たちが社会に向けた「看板」です。 この看板によって他人はその人を判断しますから、常に他人に対してひとつの記号を発信している、それが顔といっていいでしょう。
顔の中でも、とりわけ重要なものは口です。 たとえば初対面の時、前歯が1本抜けているだけで、その人へのイメージダウンは避けられません。
かつてタバコのコマーシャルに出て話題になったくしゃおじさんは、実は歯がありません。 歯がないとあれだけ顔を縮ませることができるのですが、笑いを取ることができたり、ユーモラスではあっても、一般社会生活の中で尊敬を得ることは難しいことかもしれません。
社会生活をする上で、他人の尊敬を得るということは大変、重要なことです。 それなりに自分の存在を尊重してもらわなくては、生きる意味さえ失われてしまいます。

ところが人間関係では、相手がどれだけ性格のよい人で、信頼のおける人かということは、よく付き合ってみないと分かりません。 しかし、多くの場合、初対面の印象が強く残ってしまいます。
その初対而で強い印象を残すのは、外見です。 その時、歯が美しくないという印象が残ると、積極的にお付き合いしたいという相手の気を失いかねません。
言葉も同じです。 人は通常、他人とのコミュニケーションの80%ほどを、言葉を介して行っています。
電話でコミュニケーションが取れるということは、まさに言葉を持つ、人ならではの特殊性です。 人の場合、明瞭な発声を行って言葉を相手に伝えることが、社会生活をする上で重要です。
ところが歯がないと、明瞭で歯切れのよい言葉を発することができなくなります。 というのは、発声そのものは声帯が振動して行うのですが、実際に相手に伝わる音にするのは口の中で行うからです。
それを構音といいますが、歯がないと音が抜けてしまい、構音が阻害されます。 構音が阻害されると、せっかく自分では意思を伝えようとしているのに、相手は何を言っているか理解しづらくなります。
すると相手に、自分の言いたいことを聞いてもらえないという結果を招きます。


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